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「誰がそんなこと信じるかよ」 創助がため息をつきながら、男に背を向けた。 「もう、まだ信じないの?とにかくバーリ国行ったらわかることだから」 「信じろってほうが無理よ」 ねえ、とゆずが三人の顔を見る。 「ああ、もう、わかった。本当はもう少し話したかったんだけど」 四人の様子を見て、男が小さくため息をついた。 「言葉より、見せたほうがいいね。ほら、この先」 そう言って、男が指を差す。 そこには、さっきまでなかったはずのとびらがあった。 「……おい、これさっきあったか?」 「ない」 「だから温、即答しないでよ……どういうこと?」 特に模様があるわけでもなく、あっさりとした素っ気無いとびら。 確かに、さっき男と話しているときはなかったはずだ。 「バーリ国へようこそ」 そうつぶやくと同時に、男はとびらを静かに開けた。 「何、ここ」 ゆずは街をみわたしながらぼんやりと言った。 あちこちに並ぶ家は煉瓦づくりで、温かみがある。街灯もまるく優しい形をしており、まさに童話の中の世界のようだ。 車はなく、馬車が行きかっている。はちみつ色の髪と栗色の髪した少年が、はしゃぎながら四人のすぐそばを通り過ぎた。 「体育館なわけ……ないわよね」 「わあ、かわいい。どこかの外国の街並みみたいね」 「……わたし、たまにくるみがうらやましくなるわ」 ため息をつきながらゆずが言うと、後ろから男の声が聞こえてきた。 「わかってもらえたかな。ここはバーリ国だよ」 四人はあわてて後ろを振り向く。 やっぱり穏やかに笑う男が、にこにこと四人を見ていた。 「あの丘の上にある、大きな城にユウタ王子がいる。そこの路地裏の小さな家が、ラーラの家だ。」 四人は丘の上を見てみる。 そこには一際大きく、存在を示すように真っ白な城が建っていた。 「……わかった。ふたりをくっつければ、おれたちはここから出られるんだな?」 「誰もくっつけろなんていっていない。お話っていうのはハッピーエンドだけじゃないだろう。とにかく結末をつければいいんだ」 「でも、やっぱりハッピーエンドがいいわよ」 創助の男の間に、ぐいと入り込んでゆずがうなずきながらそう言った。 「ユウタ王子とラーラを引きあわせるといいのね。で、ハッピーエンド。」 ね、とゆずが確認するようにみんなを見た。 「素敵。いいわね。本物の王子様に会えるなんてなんか楽しみ」 「おれは出られるんならそれで」 「本当に出られるんだろうなあ……」 創助が男をにらむと、男はふうとため息をついた。 「本当だってば。おれはとにかく案内役だから、ここまで。」 「ここまでって……」 「それじゃあ」 男がそう言ってのんびり手をふると、すっとその場から消えてしまった。 何度見ても、男のいた場所はその先の景色しかない。 「……色んなことがあるものね……」 ゆずが小さくつぶやき、街をみわたした。 「そもそもはゆずがドアを開けようなんていうから」 「創助がはやくドアを開けないから!」 「それはあいつが閉めたんだろ!」 それはそうだけど!とゆずがさけぶ。 「ともかく、王子とラーラちゃんのところにいきましょうよ」 言い合うふたりの間に入りながら、くるみがそう言った。 「街の地図がなにもないなんて不便だね。通貨とかはどうなんだろう」 温はお財布を取り出しながら、小銭を数える。五百円が二枚と十円が一枚しか入っていない。 「確かにそうね。あと、服とか……」 四人とも、高校の制服だから目立ってしまう。いや、それよりもこんなよそ者がふたりに話しかけることなんてできるのだろうか。 色々不安要素をならべていくうちに、少しずつ口数が少なくなっていく。 「……やっぱりここから出られないんじゃ……」 「もう、くるみ!」 しっかりしてよ、とゆずはくるみの肩を支えた。 「通貨は大丈夫だよ。服を買うといい。」 ふと、さっきの男の声が聞こえてくる。 あわてて周りを探したが、男の姿はどこにもない。 「姿は見せていないから、どこにもいないよ、声だけ。君たちだけに聞こえる。 地図も近くの店にあるから買ってもいいし、歩いているひとにきいてもいい。」 ここまで不思議なことが続くと、もう空から声が聞こえてきてもおどろかなくなってしまう。 人間って不思議だなあ、そう思いながらゆずは声に耳をかたむけた。 「あ、ちなみに携帯電話も使えるから」 「携帯もかよ!」 「だって使えないと不便でしょ。あ、もちろん外とは通じないけど」 温が制服のポケットから小さなシルバーの携帯電話をとりだして確認する。 そこにはきちんと電波があることを示していた。 「なんていうかこう、適当よねえ……」 「まあ携帯が通じるんだから、王子とラーラ二手に分かれよう」 創助がそう言って、みんなを見た。 「お城遠いしねえ……よし、ジャンケンで負けたふたりがお城よ」 ゆずは拳を突き上げて、いつも通りのかけ声をした。 「最初はグー!」 じゃんけんぽん、で出した手の形をゆっくりと確認していく。 温とくるみがピースの形、ゆずと創助が拳の形をしている。 「やった!じゃあわたしと創助がラーラね!」 「本当にお城まで歩くの……?」 「わたしは王子様に会えるの楽しみだけれど。温の体力が心配ね」 温は右手のピースをながめながら、面倒そうに顔をゆがめる。 「とにかく、携帯で連絡をとりあおう。ふたりを会わせることが大事だ」 創助がそう言うと、四人は静かにうなずいた。 バーリ国 →引きこもり王子 |